ランニングのウェアやシューズの展示会や発表会には案内をいただけたらできるだけ参加するようにしています。私自身もDogsorCaravanもファッション系の話題は弱点ですが、だからこそ接点は活かそうと考えています。
そんな文脈で最近調べ物をしていたら、アウトドアカルチャーとファッションの境界線が曖昧になりつつあることについて、「GORPCORE(ゴープコア)」という言葉があることを知りました。登山やキャンプなどのアウトドアギアを日常のファッションに取り入れるスタイルを意味していて、機能性とデザイン性を兼ね備えたアイテムを取り入れるのが特徴だといいます。
GORPCOREという言葉は2017年にニューヨーク・マガジンのファッションブログ「The Cut」の編集者ジェイソン・チェン Jason Chen氏によって初めて使用されたそうです。ハイカーたちに人気のトレイルミックスを「Good Ol' Raisins and Peanuts(GORP)」と呼ぶことに由来しています。
GORPCOREがトレイルランニングの普及につながる?
GORPCOREはトレイルランニングというスポーツへの新たな入り口となる可能性を秘めています。以下のようなきっかけが考えられます。
ファッションからスポーツへの自然な移行:トレイルランニングシューズはGORPCOREで最も注目されているアイテムとなっているといいます。サロモンのXT-4は最近のランニングシューズとしての機能を優先する競技のためのトレイルランニングシューズと比べると少しクラシックに感じますが、ファッションアイテムとして人気です。ここ数年で最も人気のあるスニーカーとなり、ファッション雑誌の特集で見かけることも珍しくなくなりました。このようなシューズを日常的に履くことで、実際のトレイルでも使ってみたいという好奇心が生まれる可能性があるかもしれません。
Functional Fashion: The Complete Guide To The Gorpcore Trend (Ape to Gentleman)
パンデミック後のアウトドアへの関心の高まり:パンデミック以降、アウトドアアクティビティを楽しむ人は増えています。米国では82%の消費者がキャンプやハイキングなどの屋外活動に参加しており、これは2020年の60%から大幅に増加しています。イギリスでも約半数の回答者がパンデミック前よりも屋外で過ごす時間が増えたと回答しています。日本ではコロナ禍が一段落してキャンプ用品の売り上げは急落したという話もありますが、多くの人がパンデミックをきっかけにアウトドアの魅力に接したことは確かでしょう。
トレイルランニングには成長の余地がある:Running Insightの調査によれば、トレイルランナー1人に対して、ロードランナーは5.3人の割合で存在しています。これは、ロードランニングに比べてトレイルランニングにはまだ成長の余地が大きいことを示しています。ファッショントレンドとしてのGORPCOREがトレイルランニングの潜在的な成長を加速させる可能性が考えられます。
若い世代の取り込み:Z世代の間ではGORPCOREは特に人気を集めているそうです。彼らは機能性とデザイン性を両立したスタイルに惹かれ、ハイキングスタイルのトレーナーやシェルジャケットなどの機能的なアイテムを好んでいるとのこと。アイテムを身につけるだけでなく、そのアイテムが想定しているフィールドに身を置くことにも興味が広がるかもしれません。
ソーシャルメディアとの親和性
2022年1月には、TikTokでArc'teryx(アークテリクス)のGORE-TEX素材に水をかけて水が流れ落ちる効果を楽しむというトレンドがあわせて2億回以上の視聴回数を記録したそうです。ソーシャルメディアを通じてGORPCOREにバイラル現象が発生していて、そこからトレイルランニングへの関心が高まる可能性があります。
What Is Gorpcore? (The Sole Supplier)
コミュニティ形成の促進も:GORPCOREに関連するInstagramアカウントがハイキングや登山、クライミングなどのアクティビティについてコミュニティに情報を提供し、共同ハイキングなどのイベントを企画する例も現れているそうです。上記で可能性として紹介していたことは単なる空想ではないことを示しています。コミュニティの形成はトレイルランニングに取り組むハードルを下げる効果を期待できます。
トレイルランニングの魅力とGORPCOREの相乗効果:Runners Worldの2022年の調査によると、トレイルランニングはハードコアなルーツを超えて、あらゆるタイプの消費者、特に女性の間で人気が高まっているといいます。こうした女性の間ではトレイルランニングの健康上の利点だけでなく、友人やグループを見つけて一緒に運動するという社会的要素にも魅力を感じているという調査結果が出ています。
World According to gorp (Running Insight)
GORPCOREがファッションとして広がることで、これまでアウトドアスポーツに関心がなかった人々が、まずはスタイルとして取り入れ、次第に実際のアクティビティにも参加するという流れが生まれる可能性は、現実のものとなる兆しがあります。ファッションとスポーツの境界が曖昧になる中で、トレイルランニングはその普及が後押しされるともに、新たなステージへと飛躍していくことが期待されます。