8月17日にハセツネCUPでコースの一部に歩行区間を設定することが発表されました。一般枠の選手はこの1.9kmの歩行区間は走らずに歩く必要があります。走った場合にはペナルティとして完走タイムに1時間が加算されるとのこと。ただしエリート枠の選手については歩行区間は設定されず、走ってよいことになります。
歩行区間となるのは三頭山の前後の区間で、ここは秩父多摩甲斐国立公園の特別保護区域となっています。この区間の自然環境を守ることが歩行区間設定の理由とされています。
しかし、同じレースの中である区間を走ることが許される選手と許されない選手がいるというのは、条件に有利不利を設けるように思えます。また、トレイルランニングの魅力の一つといわれる、優勝選手から最終ランナーまで同じトレイルでの体験を共有する、という美風に反します。さらに自然環境を保護するならエリート選手についても歩行を求めるべきでは、という考えもあるでしょう。
ちなみにエリート選手の定義は、歴代の優勝経験者に加え、PIが男子550、女子500以上の選手とされています。ITRAのデータベースの日本の選手全体の分布からすると、男女ともおよそ2割ほどがエリートとなりそうです。
加えて、翌年以降にエリート枠に入る上で一般枠の選手はエリート枠の選手より不利になる可能性があります。これはエリート枠にITRAのパフォーマンスインデックス(PI)で基準を設けているためです。PIは36ヶ月以内の選手のレースの結果のうちベスト5を一定のロジックで加重平均したものです。例えばほぼ同じPIの選手がPIの閾値で一般とエリートに分かれた場合、一般に回った選手は歩行区間の分だけ完走タイムが延び、ITRA PIが低くなるでしょう。
ただ、今回こうした歩行区間を設けた理由も推察できます。
一つは、国立公園の特別保護区域の利用について何かアクションを起こさなければ大会の継続も難しかったであろうこと。
次いで、ハセツネCUPは日本におけるトレイルランニングの競技団体であるトレランJAPAN(一般財団法人日本トレイルランニング協会)を構成する最大のメンバーであり、トレランJAPANが力を入れる、日本におけるトレイルランニングの競技力の強化という目標を共有していること。日本を代表するトレイルランニング大会として、これまでのように上位入賞選手からトレイルランニング界のトップ選手を輩出してきた大会の存在意義は守りたい。2000人の選手全員に三頭山を走らせることはできなくても、一部のエリート選手だけを走らせるなら自然環境の保護には悪影響を及ぼさない。ならばその一部の選手には走ることを認めたのでしょう。
私自身は競技としては歩行の義務の有無で条件が違うのだから、エリートの部と一般の部は別のレースとして扱ってそれぞれの上位を表彰すればよいのでは、と思います。そしてこのことはトレイルランニングのマスイベントはこのようにエリートレースとオープンレースを分けるのが当たり前になる、場合によってはコースも一部は別になる。その先駆けなのかもしれません。
とはいえ同じ競技で条件を揃えることが必ずしもできていないのは今に始まったことではありません。ハセツネでいえば、スタート後の広徳寺の先でトレイルに入ってからの大渋滞は競技条件の著しい不平等の例です。大会ではこれまでの自己申告による完走タイム順のスタートブロックをやめて、今年はITRA PIでスタートブロックを決めるそうです。渋滞は解消するでしょうか。
皆さんはハセツネCUPの歩行区間導入にどう思いますか?ご意見をコメント欄にお寄せください。
今回の決定で腑に落ちない点があります。エントリーが終わってからルールを変えた事です。来年からでも良かったのでは?と思います。