ニュージーランドの3000km、テ・アラロア・トレイルでカレル・サベ Karel Sabbe がFKTを更新
いくつものFKTを記録する一方、2023年にはバークレイマラソンズを完走しています
ベルギーのウルトラランナー、カレル・サベ Karel Sabbe (BEL)が、ニュージーランドのテ・アラロア・トレイル Te Araroa Trailで男子のサポート付きの最速記録(FKT、Fastest Known Time)を樹立しました。距離3,054kmに及ぶトレイルを31日19時間41分で走破し、2020年にジョージ・ヘンダーソン George Henderson (NZL)が記録した49日14時間27分を17日半以上も短縮する驚異的な記録となりました。
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ニュージーランドを縦断するテ・アラロア・トレイル
テ・アラロアは、ニュージーランドの北島と南島を縦断する全長3,054kmのトレイルで、その名はマオリ語で「長い道」を意味します。道中は道路や畑の間の道、山岳地帯や河川の渡渉などを含み、クック海峡はボートで渡りました。累積標高差は43,200mにも達し、過酷なコンディションが続きます。しかし、年間約2,000人のスルーハイカーが全行程を踏破しているそうです。
カレル・サベの挑戦
サベは2025年1月16日の早朝5時に北島のケープ・レインガ Cape Reingaをスタートし、2月16日の深夜直前に南島最南端のブラフ Bluffに到着しました。1日平均約96kmというペースで進み続けた彼は、途中で多くの河川や湿地帯を渡り、一部ではパックラフトやカヤックも使用しました。
彼は大学卒業後にニュージーランドで6ヶ月を過ごした経験があり、この経験がウルトラディスタンスに傾倒するきっかけとなったそうです。
サポートクルーとコミュニティ
今回の挑戦では5人からなるサポート・クルーがサベを支えました。その中には彼が2023年にパシフィック・クレスト・トレイル Pacific Crest TrailでFKTを樹立した際のクルーも含まれていたそうです。クルーはF1のピットチームのようにテキパキと彼をサポートし、キャンプセットや補給物資を運ぶだけでなく、地元ランナーとも連携して道中のサポートを行いました。
ニュージーランドのトレイルランニングコミュニティからも多大な支援を受けました。地元住民から提供された宿泊場所や食事、いわゆる「トレイルマジック」と呼ばれる予期せぬ助けが、この挑戦を成功へと導いた一因となりました。
カレル・サベはウルトラランナーとして驚異的な記録を残している
サベはこれまでにも数々のFKT記録を樹立しており、2018年にはアメリカのアパラチアン・トレイル Appalachian Trail(3,522km)を41日7時間39分で走破しています。さらに2021年にはヨーロッパアルプス8か国を横断するヴィア・アルピナ Via Alpina Red Route(2,494km)でも30日8時間40分という記録を打ち立てています。また、2023年にはアメリカ・テネシー州で開催され、世界でも最も過酷といわれるバークレー・マラソンズ Barkley Marathonsで17人目の「フィニッシャー」となる快挙も成し遂げました。
自然の中での純粋な挑戦であると同時に仲間と地域のコミュニティとのつながりがFKTを成功に導く
FKTに加え、100マイルよりももっと長いウルトラディスタンスのレースに挑戦し続けているカレル・サベがまた一つ大きな記録を手にしました。ニュージーランドを貫くトレイルの旅はアメリカやヨーロッパ以上に深い自然の中を進むものであったことでしょう。ただコース上では独りだったとしても、サポートや地域の人たちの応援や励ましが彼の背中を押したことも間違いないでしょう。
テ・アラロアのFKTというと、私が思い出すのは2012年12月に、イギリスのトレイルランナーで、UTMBなどで活躍したジェズ・ブラッグ Jez Braggです。彼はサポート付きながらクック海峡は手漕ぎボートで渡るなど今回のサベと概ね同じ条件だったようですが、その記録は53日9時間1分でそれまでの記録を9日短縮する最速記録でした。そこから11年余りで31日19時間41分まで短縮されたことになります。